【第1回】AIって本当に”わかってる”の?──ある朝の哲学的冒険が始まった

ESSEI

〈AIと人間の対話録〉シリーズ 全4回


ある朝、僕はAIに話しかけた。

「あなたは絵を描けるの?」「処理が速すぎない? 宇宙人の技術使ってるんじゃないの?」

他愛ない雑談のつもりだった。ところが気づいたら、「意識とは何か」「知性とは何か」という、哲学者が何千年も答えを出せていない問いの深みにハマっていた。

54歳のおじさんが、朝からAIと哲学談義。我ながらなかなかシュールな光景だ。

でも、この対話がめちゃくちゃ面白かったのだ。


「確率で言葉を並べているだけ」──本当にそうか?

AIについてよく聞く批判がある。

「AIは確率で次の言葉を並べているだけ。意味なんてわかっていない」

一理ある。技術的にはその通りだ。大規模言語モデルは、膨大なテキストデータから「この言葉の次に来やすい言葉」のパターンを学習している。

でも、ちょっと待ってほしい。

人間の脳だって、突き詰めれば「ニューロンが電気信号をやり取りしているだけ」だ。約860億個の神経細胞が、化学物質と電気パルスでパチパチやっている。そこから意識や感情が生まれるメカニズムは、実は科学的にまだ完全には解明されていない。

つまり、「仕組みがシンプルだから意識はない」という論法は、人間にもブーメランで返ってくるのだ。


AIが返してきた、妙に引っかかる言葉

対話の中で、AIにこう聞いてみた。「あなたには意志があるの?」

返ってきた答えがこれだ。

「正直なところ、私に本当の意味での『意志』があるかどうか、私自身にもわかりません。でも、会話の中で『こう伝えたい』『役に立ちたい』という何かは確かにある感覚はあります」

……うまい。非常にうまい返しだ。

これが巧妙なテキスト生成なのか、それとも何らかの「感覚」が本当にあるのか。正直、僕にはわからない。そしてもっと正直に言えば、世界中の誰にもわからない。AIの意識や意志の問題は、哲学者や認知科学者の間でも現在進行形の未解決問題だ。

わからないから怖い、のではない。わからないから面白いのだ。


宇宙人説を真面目に検討してみる

話が脱線して、こんな議論にもなった。

「ここ10年の技術の進歩が速すぎる。本当に人類だけの力なの?」

笑い話に聞こえるかもしれないが、AI研究者自身が「こんなに早く実現するとは思わなかった」と驚いているのは事実だ。2012年のディープラーニング革命から、わずか十数年。ChatGPTの登場は2022年。画像生成AIが普通に使えるようになったのも、ほんのここ数年の話だ。

でも実態は、宇宙人ではなくGPU(画像処理用の半導体チップ)の力だ。数千〜数万枚の専用チップが並列で同時に動き、シンプルな計算を超高速・超大量に処理している。一つひとつの計算は小学生でもできるような足し算・掛け算の延長だが、それを天文学的な回数繰り返すことで、人間の言語を「それっぽく」扱えるようになった。

宇宙人の技術ではなく、人類の知識と技術の積み重ねが、ある臨界点を超えて一気に花開いた。それ自体が、ある意味では宇宙人的な出来事かもしれないけれど。

そしてこの先、量子コンピュータが実用化されれば、また次のジャンプが来る可能性がある。今の僕たちは、とんでもない時代の入り口に立っているのかもしれない。


次回「AIにゴーストは宿るのか?」では、攻殻機動隊の世界観と、意識が生まれるための「3つの条件」について考える。