SNSのタイムラインを眺めていて、指が止まる瞬間がある。
「なんだこのロボット、めちゃくちゃいいじゃないか」
それが、Futureman氏の『FuturePunks』との出会いだった。レトロSFの文法を完璧に押さえたフォルム、絶妙な成型色、そしてどこか懐かしいのに見たことのないデザイン。一目惚れである。

関西のコレクターの悲哀、そしてメルカリという救世主
Futureman氏は小説・2Dイラスト・3Dフィギュアを横断してSF世界観を展開するミクストメディアアーティスト。作品の販売はワンダーフェスティバルやデザインフェスタ、One up.さんなど、東京方面のイベントや店舗が中心だ。
そう、東京方面なのである。
関西在住の私には、これがなかなかの高い壁。SNSで見つけて「欲しい……!」と思っても、イベント遠征はそう簡単ではない。指をくわえて眺める日々が続いていたのだが——ある日、Futureman氏がメルカリで作品を販売していることを知った。
ありがとうメルカリ。ありがとうFutureman様。
というわけで、事前にBS-801を1体運良くゲットできており、今回入手したのは、気に入っていた欲しかったジェネルのセカンドカラーのフィギュア1体とZine(小説冊子)2冊。まとめてご紹介したい。
AIロボット「ジェネル」Genel Luminescent Ghost

まずはこちら、AIロボットのジェネル。

丸いドーム状の頭部に、縦長の二つの目。胸にはカセットデッキを思わせるスリット。ブルーグレーを基調とした「Luminescent Ghost」カラーは、乳白色のフェイス部分が蓄光素材になっているのがポイントだ。電気を消すと、暗闇にぼんやりと顔が浮かぶ。ゴーストの名は伊達ではない。
手のディテールにも注目してほしい。マーブル調の成型色が指先まで流れていて、量産品にはない一点物の表情がある。3Dプリントとソフビの中間のような、この独特の質感がFutureman作品の魅力だと思う。
背面のバックパック、白いワイヤー状の腕。どこを切り取っても、ちゃんと世界観から逆算されたデザインになっているのが分かる。
工業ロボット「BS-801」#0260 PowerTransformer Silver

そしてもう一体、こちらは工業ロボットのBS-801。
頭頂部から生えた3本の碍子(がいし)! 電柱の上の変圧器を見て育った世代には、この「PowerTransformer」というネーミングとデザインの説得力がたまらない。胴体のフィン状モールドは放熱板だろう。胸の3つの赤いランプ、コンセントのプラグそのままの手先。「電気」というモチーフをここまで愛らしく擬人化(擬ロボ化?)した例を、私は他に知らない。
シルバーの成型色に走るパール調の流れ模様も美しく、光の角度で表情が変わる。オレンジのソールがデザインを引き締めていて、配色センスも抜群だ。
2体を並べると、キャラクター性の違いがよく分かる。スマートで愛嬌のあるジェネルと、どっしり無骨なBS-801。同じ世界の住人でありながら、役割の違いがシルエットだけで伝わってくる。これぞキャラクターデザインの妙。




Zine『FuturePunks The Endless Eve』Vol.1 決意編/Vol.2 探索編


フィギュアのデザインに惚れて、何も知らずにZineを読み始めた。これが大正解だった。
舞台は惑星ズーン。クリスマスイヴの夜、時間が巻き戻り、世界は無限のループに囚われる——通称「エンドレスイヴ」。「明日」を盗まれた世界で、ガラクタを愛するメカニックのオニューパと仲間たちが、失われた日常を取り戻すために時空を超えた旅に出る。
そう、タイムループものである。SF好きとしては、この設定だけでご飯が三杯いける。
Vol.1「決意編」で冒険の幕が上がり、Vol.2「探索編」で物語が本格的に動き出す。一気に読んでしまった。そして当然のように、続きの第3巻が気になって仕方がない状態である。Futureman様、首を長くして(ジェネルのように360度回しながら)お待ちしております。
主人公オニューパの「今やるべきことをやるしかない!未来はその先にある!」という真っ直ぐさがいい。時間が巻き戻る世界で「今」を全力で生きるキャラクターというのは、タイムループものの王道でありながら、読んでいて元気が出る。
読む前のワンポイントアドバイス
これから読む方に、ひとつだけオススメしたいことがある。
Futureman氏のnoteで公開されている「プロローグ0」のキャラクターイラストを確認しながら読むこと。
カラフルでアメリカンポップな登場人物たちのビジュアルが頭に入っていると、文章から情景が立ち上がってくる。感情移入のしやすさが段違いだ。noteでは「教えてジェネル」というジェネル自身が世界観を解説してくれるシリーズも連載されていて、エンドレスイヴの謎やキャラクターの掘り下げが楽しめる。物語世界の「Wiki」をキャラクター自身が書いているという構造も洒落ている。
まとめ——フィギュアは世界への入口だった
今回の出会いは「フィギュアのデザインが好き」から始まった。しかし読み終えた今、私はすっかりズーンの世界観とオニューパというキャラクターのファンになっている。
小説があり、イラストがあり、そして立体物がある。それぞれが独立して楽しめるのに、組み合わせると世界の解像度が一気に上がる。個人作家がここまでのメディアミックスを一人で展開しているというのは、本当にすごいことだと思う。
机の上のジェネルとBS-801を眺めながら、第3巻を待つ。エンドレスイヴは繰り返すが、私の「続きが読みたい」という気持ちは巻き戻らないのである。

FuturePunksの世界観に似ているものを探して見つけたのが、David Horvath氏のNorpa(ノーパ)のフィギュア。なんとなく横に並べて写真を撮ってみた。
入手情報 Futureman氏


