SNSで一目惚れした「テレビ頭」ロボット ―― Nelnalさんの T-BOY と VAG「VARI-TV」を追いかけて

個人作家・インディーズソフビ

30年以上、SFロボット玩具を集めてきた僕だけれど、たまに「これはドンピシャすぎる」という出会いがある。今回紹介する Nelnal(ネルナル)さんの「T-BOY」は、まさにそれだった。

きっかけはSNSの一枚のイラストから

最初に見たのはSNSに流れてきた一枚のイラストだった。ブラウン管テレビが頭になった、あの独特のフォルム。カートゥーンと日本の漫画が混ざり合ったような、ポップで人懐っこい絵柄に一瞬で目が奪われた。

僕はもともとテレビ型・パソコン型のロボットが好きで、頭部が家電やモニターになっている「オブジェクトヘッド」系のデザインには目がない。長年集めてきたコレクションにも、この手のモチーフはいくつも並んでいる。そこにきて、Nelnalさんの描くキャラクターは「かわいい」と「ちょっと不気味・凶暴」が絶妙に同居していて、単なる懐古趣味では終わらない新しさを感じさせてくれた。

最初に買ったのは、立ち姿のT-BOYソフビ

気になって調べてみると、Nelnalさんが個人制作していたキャラクターが「T-BOY」というオリジナルキャラクターで、SOULMONITORという世界観に属していることが分かった。まず手に入れたのは、立った姿のT-BOYソフビだった。(いつかレビューする予定)

四角い頭部の中に白黒の目、下にジグザグの線が入った口。憎めない表情。頭頂部に左右対称の2本のアンテナ、全体的に丸みを帯びたボディ。触れてみると造形の密度が高く存在感がある。ここから、僕のNelnalさん追いかけが本格的に始まった。

ガチャで広がった沼 ―― T-BOYフィギュアコレクション

2024年5月、SK JAPANから「T-BOYフィギュアコレクション」としてガチャガチャが展開された。1回400円、全4種。

  • ノーマルカラー(黄)
  • ERRORカラー(グレー・白黒)
  • トイカラー(グレー・パステル)
  • クーニングカラー(青)

座ったポーズで、ボタンやラインの配色が絶妙に違う。全部集めて並べてみると、同じキャラクターなのに一体ずつ表情が違って見えてくるのが不思議だ。ちなみに座り込んだ後ろ姿がまた良い。頭の後ろにちょこんと覗く黄色いスピーカー(?)部分まで抜かりなく造形されていて、360度どこから見ても飽きない。

そして2026年、まさかのVAG参入

今年、さらに驚くニュースが飛び込んできた。Nelnalさんが個人制作していた「VARI-TV」というキャラクターが、メディコム・トイの人気ソフビガチャブランド「VAG(VINYL ARTIST GACHA)」のシリーズ47に、まさかの選出。2026年6月中旬に発売されたばかりだ。

VAGといえば、国内外の新進気鋭のソフビアーティストたちが集う登竜門的な存在。そこに個人制作キャラクターが選ばれるというのは、インディーズからメジャーへのステップアップそのもので、長年追いかけてきたファンとしては胸が熱くなる出来事だった。

立ち姿のVARI-TVは全5色展開。歯を見せたニカッと笑顔、青画面の困り顔「:(」、砂嵐の目、バッテン目の「××」、緑画面のニヤリ顔。それぞれ「放送内容」が違う顔つきバリエーション型のガチャで、T-BOYの座りポーズシリーズとはまた違った魅力がある。ブルースクリーンの困り顔なんて、長年パソコンと付き合ってきた人間には笑うしかない表情だ。あの絶望を、こんなに可愛くパッケージするか。

テレビ頭ロボットの系譜のなかで

ここで少し、コレクター視点で「テレビ頭ロボット」の系譜を振り返ってみたい。

このモチーフの金字塔といえば、やはり『フリクリ(FLCL)』のカンチだろう。ハル子のベースで頭をぶち抜かれた少年の額から生まれた、あのエメラルドグリーンのテレビ頭ロボット。2000年当時、「テレビが頭」というデザインがこれほどスタイリッシュに、そして切なく描けるのかと衝撃を受けた。カンチのフィギュアは今でも僕のコレクションの中で特等席に鎮座している。

海外に目を向ければ、香港のPlayable Design(Joe Wong氏)によるClassicbotシリーズも外せない。初代Macintoshを思わせるクラシックなパソコンがそのままロボットになったデザインで、こちらは「かわいい」よりも「プロダクトデザインとしての美しさ」に振り切った佇まいが魅力だ。レトロコンピューティングへの愛が造形からにじみ出ている。

他にも、ブラウン管テレビや初期のパーソナルコンピュータをモチーフにしたキャラクターは、国内外のデザイナーズトイシーンに脈々と流れている。大学時代からコンピュータに触れてきた僕にとって、この「四角い画面に魂が宿る」というモチーフは、たぶん一生ものの好物なのだと思う。

そんな系譜のなかでNelnalさんのT-BOY/VARI-TVが面白いのは、その立ち位置だ。カンチが「アニメの中の存在」で、Classicbotが「プロダクトへのオマージュ」だとすれば、T-BOYは「画面に表示される表情そのものがキャラクター」という点で一歩踏み込んでいる。目も口も、すべてが画面上の「映像」。だから砂嵐にもなるし、エラーにもなるし、ブルースクリーンにもなる。テレビ頭というガワの面白さだけでなく、「画面に何が映るか」でキャラクターの感情と状態を語る。これはデジタルネイティブ世代ならではの発想だと思う。

カートゥーンライクなポップさに惹かれる理由

Nelnalさんの作品に一貫して感じるのは、線の伸びやかさと色使いの潔さだ。太めの輪郭線、はっきりした色分割、記号的だけど感情が伝わる表情。往年の海外カートゥーンや、レトロな家電デザインへのオマージュを感じさせながらも、古臭さは全くない。

個人制作のSNS投稿から始まり、ガチャ化、そしてVAG参入。ポケモンカードのイラストや『RATATAN』『DELTARUNE』のキャラクターデザインまで手掛けるようになった今も、自分のオリジナルキャラクターを大切に育て続けている姿勢がいい。今のインディーキャラクターデザイナーの理想的な成長のかたちを、リアルタイムで見せてもらっている気がする。

まとめ ―― 我が家の「放送局」は増え続ける

一枚のSNSイラストから始まった僕のNelnalさん追いかけは、立ち姿のT-BOYソフビ購入、ガチャ4種コンプリート、そして最新のVAG「VARI-TV」5色まで続いている。棚に並べると、カンチ、Classicbot、T-BOY、VARI-TV……と、我が家の「テレビ頭放送局」はチャンネル数を増やす一方だ。妻には「またテレビが増えたの?」と言われるが、これは正確ではない。増えたのはテレビではなく、テレビ頭の住人である。

テレビ・パソコン型ロボット好きなら、ぜひ一度手に取ってみてほしい。あなたの棚にも、新しいチャンネルが開局するはずだ。

Nelnal(ネルナル)氏の関連リンク集

公式・SNS

書籍・作品集

  • 『Nelnal 作品集 Mutant Friends』(玄光社/2024年6月24日刊)ISBN 978-4-7683-1920-8

T-BOY フィギュアコレクション(SK JAPAN・2024年5月)

VAG SERIES 47「VARI-TV」(メディコム・トイ/2026年6月)